三年越しの課題 2015.04.04
先日、大学に合格して親元を離れる生徒たちと
合格祝勝会&お別れ会をした。
そして、大学合格ではない「元・生徒Mさん」にも連絡をとった。
Mさんは、ちょうど3年前に受験した高校を不合格になり、
二次募集の高校に進学をした。
その高校に進んだ後も、しばらくは塾に来ていたが、
やがて休みがちになり、そして来なくなった。
3年前の受験のときに、
私は「Mさんは合格できる」と言い、学校の担任もそう言った。
しかし不合格だった。
泣きじゃくりながら
「先生ごめんなさい」と電話をかけてきたMさんに、
「責任はすべて先生にあるから、Mさんは何もわるくないよ。
すべて先生がいけない、本当にすまない」
と私は震える声で何度も言った。
あのとき、私のMさんへの学習指導には油断があった。
そして、合格ぎりぎりの別の生徒の指導に気持ちがあった。
もう少し、細かく作戦をたてて指導していたなら…。
そんな深い後悔があった。
私はMさんに何ができたのか、何ができるのだろうか、
そう考えれば考えるほど苦しかった。
Mさんが進んだ高校は中退者が多い高校で、
私はMさんと中学で同級だった生徒に
「Mさんは元気でやっているかな」
「ちゃんと学校に行っているかな」と、たびたび尋ねた。
そしてMさんが学校の放課後から夜にかけて、
アルバイトをしていることを母親から聞いた。
「あの子はどうしてあんなに働くのかわからないんです」と言い、
「とにかく早く自立したいようです」と母親は話した。
大学に進学する生徒達の進路が決まって、
私は思いきってMさんに電話をした。
「先生、私、就職が決まったんです!」
そんな元気で明るい声が電話の向こうから聞こえてきた。
合格祝勝会は、合格祝勝会&入社祝い会になった。
「先生、私、会社にはもう出勤しているんですよ。
あまり楽しい仕事ではないけど。
それから、実は土曜と日曜は酒屋でバイトもしてるんです。
この酒屋のバイトは楽しくて楽しくて!」
そう話すMさんに、私は一抹の不安を感じて、
「そんなに働いてばかりじゃ、身体がまいってしまうよ。
それに、会社の仕事に影響するよ。入ったばかりの会社なんだから、今は楽しくなくても、 3年は続けてみないと何もわからないからね」と諭すように言った。
本当は、Mさんが会社員を続けられるのだろうかとの疑念から
「会社の仕事は少なくとも1年は続けてみないと…」
と言うつもりだったのだ。
そんな私に対してMさんは、
「先生、私、少なくとも会社員は5年以上はやるつもりです。
その間にもっと、いろいろな事を考えてみます!」と。
私の一抹の不安は払拭された。
Mさんは私の想像を遥かに越えて成長していた。
次の日、お礼のメールが来た。
実に爽やかな文章だった!
そして、三年越しの私の課題は、
乾燥した弥生の強風に吹っ飛んでいった。